2013年04月13日
追いかけあう二人──穏乃と和によって紡がれる阿知賀編の物語構図
コマ組みが合わせて並べられるキャラは対比されていることが多い。
実は、「穏乃」と「和」の二人も、きっちりと比較されている二人。
しかも、素晴らしいのは、第一話と最終話の構図が逆転する見事さ。
ってのを、以下ざっと見ていく。
■ 穏乃たちを追いかける和
最初は、走る穏乃と憧を「和が追いかける」描写がされていた。
これがスタート地点であり、最初の構図。
倒れこむ和は、得意なものを問われて、言う。
「そうですね…… しいて言うなら麻雀でしょうか」
この言葉がきっかけで、和は子供麻雀教室に入り、穏乃たちとの思い出を作る。
■ 和を追いかける穏乃
ところが、「麻雀」を通して並ぶどころか、和は中学生チャンピオンにまで駆け上がる。
以降、「穏乃が和を追いかける物語」が描かれる。
これが、穏乃と和の第二の構図であり、阿知賀編の物語そのもの。
第一話序盤では、和が穏乃を追いかけていた。
だが第一話終盤では、穏乃が和を追いかけている。
この「追いかけ合う二人」が作者が意図した対比。
そのことが推測できる画像が次の二枚。
まず一枚目。穏乃についていけなかった和の図。
次に二枚目。和についていけなかった穏乃の図。
絵が合わせられていることに気付いていた人……何人くらいいました?
と、ドヤ顔で言いたいところだけれど、この記事を書き始めるまで私も気付いてませんでした……。
「こんな符合なんて偶然だろっ」って言われる人がいるのもわかる。
でも、やっぱり、これは作者が意図したものなのだ。
阿知賀編最終話を読むとわかる。
またしても、「穏乃と和の追いかけっこ」が描かれているのだから。
■ 阿知賀編最終話でさらに再逆転する「追いかけっこ」
阿知賀編は第一話終盤から以降、穏乃が和を追いかける物語だったが──、
最終話にて、インターハイ決勝に先に辿り着いたのは穏乃の方だった。
ここで構図はさらに逆転し、「和が穏乃を追いかける物語」になった。
そして、それは勿論、咲-saki-本編につながる。
このことが暗に表現されているのが、阿知賀編最終話のカラーページ。
構図で、穏乃と憧を和が追いかける様子が描写されている。
もちろん、先に決勝に進んだ穏乃と憧を「追いかける和」の暗喩以外の何物でもない。
ちなみにこのシーン、明確な比較先がある。
第一話において、初めてみんなで麻雀を打った後、通った坂なのだ。
(要するに、和が思い出しているのは、穏乃に出会った日のことであり、楽しかった思い出というわけ)
と……、こんな感じで「追いかけあう二人」が阿知賀編の物語構図になっている。
この構成は上手いという他はない。
以下、おまけみたいなものを三つ。
■ 補佐的項目・その一
穏乃と和が出会うシーン。
なぜこのタイミングで出会ったのかは、以上の流れを押さえていればわかる。
二人の追いかけあいは、インターハイ準決勝という位置で並んだ。
それを象徴するシーンになっている。
■ 補佐的項目・その二
最終話で、準決勝に挑む和の脳裏に浮かぶ、「おそいよ 和っ」
第一話で、穏乃が言う、「おそいよ 和っ」
あからさまに同じ台詞なんだけど、見落としている人もいると思うので並べてみた。
準決勝に向かう和が思い出しているのは、「先を行く穏乃」が自分の名前を呼んでくれた時のこと。
■ 補佐的項目・その三
せっかくだから、「追いかけ合う二人」の台詞も並べてみた。
いやー、やっぱり、小林立さん、構成が見事だわ。
読んでいてジーンときました!
咲は奥深いですね!
記事を読んでる間ずっと鳥肌が立っていました
もう一度阿知賀編を読み返してきます!
今度は和が追いかける側ですね・・・。準決勝、そのことを意識してペースが狂うんじゃないか、という予想もしております。
すばらです!
私はまだ読みが浅いなと感じる記事でした
もう一度じっくり読み返してみますね
こうやって書いてますが、まだ気付かれていない色々があるんだと思います。
一つ一つ見つけて行きたいですね−。
名無しちゃんさま
そう言っていただけるとありがたいです。
僅かな描写から聖地を絞り込んだりはできませんが、物語の構図分析は得意ですので、これからもこんなかんじの考察をアップして行きたいと思います。
やえさん好きのロロさま
小林立さんは対比はお好きでしょうね−。
長野副将戦やら、長野大将戦やらで対比構造大活躍でしたから。
コロナさま
私も自分が得意なもので勝負しているだけで、それ以外はさっぱりですねー。
他のサイトの考察を呼んで、おおー、と思うことしきりです。