2012年09月29日

池田と笑顔と泣き顔と(池田華菜にまつわるシナリオ考察)

 池田華菜のシナリオは、麻雀の敗者にスポットをあてている。
 勝者と敗者、笑顔と泣き顔をキーワードに選び、始点と終点が綺麗に揃えられている。

 ……と言っても何のことかわからないだろうから、以下、それを押さえながら振り返ってみる。


 池田シナリオにおける笑顔と泣き顔

始点

笑顔の池田1.JPG

 ここが池田シナリオの始点。
 池田は二回戦ダントツトップ終了でドヤ顔。

 その裏で、「もう麻雀やめる……!!」と言って部屋から駆け出す女の子がいる。
 実は、この女の子が重要なポイント。


笑顔の池田4.JPG

 だが、部室に戻った池田はその打牌の甘さをコーチに怒られて泣く。
 キャプテンにフォローされるが、このパートが終わるまでその表情は戻らない。

 とりあえずここまでが始点。
 勝利と敗者。笑顔と泣き顔が描かれている。


転換点

笑顔の池田5.JPG

 決勝戦途中のシーン。
 点数を減らされまくり、楽しめないと言う池田。


笑顔の池田8.JPG

 決勝戦休憩時のシーン。
 暗い表情の池田。キャプテンを泣かせてしまう。


池田b02.JPG
池田b01.JPG

 「にゃー!!」による転機。
 前を向くことへの決意。


池田b03.JPG

 決勝戦終盤。
 絶望的な状況にも関わらず笑顔の池田。


池田b04.JPG

 コーチによる「笑顔か…」の台詞。
 作者が、池田の物語のキーワードが「笑顔」だよと伝えているみたいなコマ。
 以降、池田は笑顔(麻雀を楽しむこと)を取り戻し、前を向く。


終点

笑顔の池田2.JPG

 決勝戦終了時のシーン。

 咲や衣にボロボロにされた池田は、それでも楽しかったと言う。


泣き顔の池田.JPG

 帰ってくるまでの通路でどういう思いがあったのかはわからない。
 泣き顔に変わっていた池田。


IMG_0846.JPG

 だが池田は「まだがんばるし」と宣言する。
 これが池田の物語の終点。

 さて、こうならべてみると、構図が綺麗に揃えられていることに気付く。


 池田にまつわる物語の構図

 ボロボロに負けて、やめると言った女の子。
 ボロボロに負けても、それでも頑張ると言った池田。

 そう。
 最後の池田は、「もう麻雀やめる……!!」と走って部屋を出た女の子との対比なのだ。

 決勝という舞台において徹底的に恥をかかされ、去年の雪辱もならなかった。
 それでも笑顔を見せて最後まで打ち切った。
 終わってから涙し、ボロボロの顔で帰ってきた。

 最初の女の子とは恥の度合いがダントツに違う。

 それでも池田は麻雀をやめなかった。
 だからこそ、池田のその心の強さがより映えるのだ。


 ぶらぼー!
 本当、綺麗に揃えられたシナリオ構図だよこれ。


 この池田のがんばりの理由は?

 もちろんキャプテンの影響。
 それがきっちり示されているのが、この二枚。

池田m.JPG
池田l.JPG

 キャプテンに影響された台詞がそのまま出てしまっている可愛い池田。
 でも、この微妙に師弟っぽい関係がすごく効いているのが、衣のこのナレーション。


池田k.JPG

 ね。ピッタリとハマった感じがするでしょう?

 これが「麻雀やめる」と言って走った女の子と、「まだがんばるし」と言った池田との違い。
 池田には「なにごとも楽しむ」というキャプテンの言葉を自分のものとして取り入れたからこそ、心が折れなかったのだ。


 とにかく咲はシナリオの組立が上手い。
 連載でこんなにカチカチ組めるだなんて、よっぽどイメージした世界(キャラの動きを含む)がしっかりしているか、先のことまで考えた上でシナリオを作っているか。

 単なる萌え麻雀漫画じゃないのですよ。


 続きの記事:池田とコーチと7ピンと(池田華菜のシナリオ考察その2)

posted by 真鯛 at 12:06 | Comment(10) | 本編(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2012年08月05日

東横桃子と加治木ゆみシナリオに関する一考察

momo01.JPG

 小林立さんのシナリオ構築の見事さについて触れていくシリーズの二回目。
 今回は、東横桃子と加治木ゆみの出会いとその台詞の深さについて。続きを読む
posted by 真鯛 at 17:00 | Comment(4) | 本編(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2012年07月18日

長野決勝副将戦におけるキャラ構図の見事さについて

 あまり評価されていないんだけど、小林立さんは構図が上手い作家だと思う。
 絵もそうなんだけど、物語もそう。
 これはスゲエと思ったのが副将戦における目立つ/目立たないを軸にした戦い。あんな対立構図と闘牌展開を考えられる頭の中を覗いてみたいくらい。


咲副将戦1.JPG


 まず最初の軸として、龍門渕透華の目立ちたがりが提示される。(この画像、実は二巻の冒頭。つまりその頃からすでに副将戦の闘牌を用意していたと推測できる)

 龍門渕透華は原村和への対抗意識が強い。
 彼女よりも目立ち、勝つということが行動の基準になっている。- - - - この記事の続きを読む - - - -
posted by 真鯛 at 00:20 | Comment(4) | 本編(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2012年04月22日

咲11話の闘牌について

 阿知賀の闘牌シーンで面白い箇所があったら、そこだけ抜き出して解説しようと思っているのでウォームアップ気味の記事を。

 アニメの咲11話の竹井久の闘牌にどういう意味があるかについて。
 上級者向けというより、初心者向けになるけれど、作中簡単に触れられている箇所をきっちり説明してみる。


 竹井久の判断

 手牌はこんな感じ。

咲11a.jpg

一萬三萬五萬九索九索九索四筒四筒四筒四筒五筒六筒七筒八筒 四萬

 選択肢は2つ。
 一萬単騎か、五面待ち(四筒四筒四筒五筒六筒七筒八筒なので三筒六筒九筒五筒八筒待ち)。


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posted by 真鯛 at 12:31 | Comment(0) | 本編(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする