勝者と敗者、笑顔と泣き顔をキーワードに選び、始点と終点が綺麗に揃えられている。
……と言っても何のことかわからないだろうから、以下、それを押さえながら振り返ってみる。
■ 池田シナリオにおける笑顔と泣き顔
【始点】
ここが池田シナリオの始点。
池田は二回戦ダントツトップ終了でドヤ顔。
その裏で、「もう麻雀やめる……!!」と言って部屋から駆け出す女の子がいる。
実は、この女の子が重要なポイント。
だが、部室に戻った池田はその打牌の甘さをコーチに怒られて泣く。
キャプテンにフォローされるが、このパートが終わるまでその表情は戻らない。
とりあえずここまでが始点。
勝利と敗者。笑顔と泣き顔が描かれている。
【転換点】
決勝戦途中のシーン。
点数を減らされまくり、楽しめないと言う池田。
決勝戦休憩時のシーン。
暗い表情の池田。キャプテンを泣かせてしまう。
「にゃー!!」による転機。
前を向くことへの決意。
決勝戦終盤。
絶望的な状況にも関わらず笑顔の池田。
コーチによる「笑顔か…」の台詞。
作者が、池田の物語のキーワードが「笑顔」だよと伝えているみたいなコマ。
以降、池田は笑顔(麻雀を楽しむこと)を取り戻し、前を向く。
【終点】
決勝戦終了時のシーン。
咲や衣にボロボロにされた池田は、それでも楽しかったと言う。
帰ってくるまでの通路でどういう思いがあったのかはわからない。
泣き顔に変わっていた池田。
だが池田は「まだがんばるし」と宣言する。
これが池田の物語の終点。
さて、こうならべてみると、構図が綺麗に揃えられていることに気付く。
■ 池田にまつわる物語の構図
ボロボロに負けて、やめると言った女の子。
ボロボロに負けても、それでも頑張ると言った池田。
そう。
最後の池田は、「もう麻雀やめる……!!」と走って部屋を出た女の子との対比なのだ。
決勝という舞台において徹底的に恥をかかされ、去年の雪辱もならなかった。
それでも笑顔を見せて最後まで打ち切った。
終わってから涙し、ボロボロの顔で帰ってきた。
最初の女の子とは恥の度合いがダントツに違う。
それでも池田は麻雀をやめなかった。
だからこそ、池田のその心の強さがより映えるのだ。
ぶらぼー!
本当、綺麗に揃えられたシナリオ構図だよこれ。
■ この池田のがんばりの理由は?
もちろんキャプテンの影響。
それがきっちり示されているのが、この二枚。
キャプテンに影響された台詞がそのまま出てしまっている可愛い池田。
でも、この微妙に師弟っぽい関係がすごく効いているのが、衣のこのナレーション。
ね。ピッタリとハマった感じがするでしょう?
これが「麻雀やめる」と言って走った女の子と、「まだがんばるし」と言った池田との違い。
池田には「なにごとも楽しむ」というキャプテンの言葉を自分のものとして取り入れたからこそ、心が折れなかったのだ。
とにかく咲はシナリオの組立が上手い。
連載でこんなにカチカチ組めるだなんて、よっぽどイメージした世界(キャラの動きを含む)がしっかりしているか、先のことまで考えた上でシナリオを作っているか。
単なる萌え麻雀漫画じゃないのですよ。
続きの記事:池田とコーチと7ピンと(池田華菜のシナリオ考察その2)